新作と古典の競演が楽しい 「よってたかって新春らくご」

古典芸能鑑賞もこう続くといささか気がさす。
何に対して?
やっぱ、自分かな。
「牛の鈴音」の爺さんほどではないけれど、働いていないとなんだか落ち着かないのかも。
働いているときは一日も早く隠居したいと、地位にしがみつく保身の輩をアザケワラッタものだが。

さて、そうはいっても落語は面白い。
思いがけず手に入ったチケットを握りしめいまだに痛む脚をかばいつついそいそと有楽町・よみうりホールへ。
ビッグカメラのテレビ売り場、小沢の苦い顔が通り過ぎる俺をにらんでいる。
だからさ、君もやめてしまったらどうなんだい。
それはアメリカの思うつぼだってかい。
ま、あっしには関わりのないこと(かな?)。
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(小沢邸警備の車が近所の寺境内にずらっと)
前座の鯉ちゃが「寿限無」を頑張っているのを聴きながら、この噺を大人が面白く聴けるように話すにはどうしたらいいのかと考えた。
分かるくらいなら噺家になれる。
隠居が噺家になった、なんてね。

百栄「リアクション指南」
キモカワイイと人気上昇中、お初。
テレビのバライテイ番組に必須のリアクションタレントを養成する指南所(あくび指南の現代版)に若(下唇を噛んで発音すること)旦那が来て「熱湯をかけられる」「機関銃を土手っパラに打ち込まれる」なんてのを教わる。

白鳥「青春残酷物語」
新潟、山口、上海から夢を抱いて東京に来た青年が現実に負けて
東京に復讐しよう!
って、その意気や壮だが、具体的目標は「キャバクラに行って飲み食いして踏み倒そう」。
笑えるけれどいささか古くなったなあこの人。
古いからって古典にはならないのが哀しいけれど。

仲入り後、「ここからはまともな噺家ですから」と断って三三が登場。
ひとしきり白鳥の変人ブリをネタにする。
噺は「高砂」。
昨日、能楽現在形で本物の「高砂」を聴いたばかり、あのときうつらうつらしてたからもう一回聴けよってか。
短い噺を長くやった。
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(よってたかって落語の前に、有楽町で。こういうのはうまくなくていいの、うまかったりしちゃいけないの)
トリは鯉昇「お神酒徳利」
今、「おみきどくり」と入力したら「毒理」とでてひやっとした。
どうも神経がひねくれている。

大掃除、旅館の番頭の善六は旦那が家宝にしているお神酒徳利が台所に放置されているのをみつけ、通りがかりの者がつまんでいっちゃあならないと取りあえず水甕の中に沈める。
掃除を一生懸命にやっている内にそのことをすっかり忘れてしまう。
政治家が「忘れた」というのと違ってほんとに忘れたから、旦那が青くなって寝込んでしまっても思い出せない。

振る舞い酒もなくしおしおと家に帰って、水を飲もうとして海馬が働いて思い出す。
今更、こうでしたっていうのは旦那の勘気が恐ろしい。
凄いカミサンがいたもので
そろばん占いをやって当ててみせろ
とってかえして、パチパチ、ふんふん、見事に当てて見せる(当たり前だのチョコレート)。
「生涯に三度、どんなことも当てることができる」というのがご先祖さまの書付にあったとカミサンの教えたセリフがいけなかった。

二階の客は柿くう客ではなくて鴻池の番頭、善六のことを聞き
お店の娘が原因不明の病で医者は匙を投げている。善六先生、ぜひ病気の原因を占ってください。
と上方への同行を願う。
これは夜逃げかとべそをかく善六に対してカミサンは強い。
ただで上方見物が出来るんだから行って来い、お嬢さんをみて死相が出ていたら「人智の及ぶところではない」と謝っちゃえばいい。
亭主の留守中、一日一両を鴻池が出すというのが効いたね。
亭主元気で留守がいい、金が出るならもっといい。

道中、泊った鴻池の定宿の様子がおかしい。
訊けば客の薩摩の侍の巾着がなくなって犯人は宿の者らしいと主人は逮捕されてこのままでは命がない。
善六はいよいよ進退キワマッタ。
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(近所の蕎麦や、「カツの抜き」、燗酒を頼んだら熱くて持てないような正一合ガラス瓶の徳利を持ってきた。水甕に沈めるわけにもいかないから替えてもらった。勘定は払うといったけど取らなかった。さて得をしたのか)

さてこの難局を善六は如何にしのいだか。
そして鴻池の娘の件は?
長くなったので後は省略、へへ。
この後が分かる方は落語検定初級(の上)合格かな。

三代目三木助、圓生の十八番(おはこ)。
正月らしく目出度い噺で楽しかった。
Commented by c-khan7 at 2010-01-17 13:13
前々から、白鳥さん、観てみたいと思っていました。
破天荒な高座だとか、、今年は、是非、白鳥観察へと。。。
カツ抜き、、天抜き、、た抜き、、と、蕎麦屋さんは色々抜いてくれますね。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-17 13:33
c-khan7さん、まえは破天荒な感じもありましたが、、。まあ、一度ご覧になって^^。
アルコール分まで抜かれてはそれこそ“台無し”です。
Commented by haruneko3 at 2010-01-17 16:54
落語をタンノウされましたね。
落語は.......私にとってのごちそう『親子丼』(おいしいそばやの)と、
おなじくらい、ほっとできる貴重な楽しみです。
saheiji-inokori さんにとっては。。。。。。。。。?
Commented by sweetmitsuki at 2010-01-17 19:55
近所の美味しいお蕎麦屋さんに足繁く通う事数年、日曜の昼間っからのお酒はメニューにあるのでお気楽に注文出来るようになりましたが「抜き」は流石に怖くて頼めません。
勘定が分からないから、ソロバンだけに桁が違います。
おあとがよろしいようで…
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-17 20:49
haruneko3さん、居残り佐平次、まさに私自身みたいなものですよ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-17 20:50
sweetmitsukiさん、でも桁は違わないかも、結構安い、台の分だけ安い。
Commented by maru at 2010-01-17 20:59 x
saheiz様
少しお疲れ様のご様子。しばし寄席をお休みされたら…
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-17 21:16
maru さん、ありがとう、でも明日はまた小三治のために並ぶのですよ。
Commented by ume at 2010-01-17 21:22 x
白鳥さん、実は我が上越市の出身。自転車屋のセガレです。
ガンバレ白鳥。地元ケーブルテレビ(!)でレギュラーあり。「農家廻り」のリポーターしていますよ


Commented by maru33340 at 2010-01-17 21:52
あ、小三治さんは別ですね(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-17 21:58
ume さん、昔は芸名が「新潟」でした。
今度の噺でも新潟出身の造型が一番良かったですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-17 22:00
maru33340さん、そうなんですよ、末広亭と池袋、完全防寒で並びます^^。
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by saheizi-inokori | 2010-01-17 10:42 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori