納涼三席 <銀座の噺小屋>喜多八膝栗毛 夏之宵
2009年 07月 18日
小三治の弟弟子・三之助が「かぼちゃ屋」を朗々とやったあと喜多八が太田そのの唄を出囃子に登場。
昔に比べると最近の蚊はなんとなく元気がない。
縞の股引穿いたやつなんか見当たらないし、などと痒い夏のマクラから江戸の夏、当時は涼みに外に出れば結構涼しいところがあったと、両国橋あたりへ夕涼みに出た凸凹コンビの噺。
喜多八は低い声でも明瞭に聴き取れる噺方をする。
それが突然びっくりするような大声で
ああらあら!大変だ、家が流れてる!
ばかやろ、あれは大屋形舟だメリハリが利いてテンポと間の良い会話が実に楽しい。
特に泥棒とか間抜けな男などが兄貴分と絡むような会話は絶品だ。
「夕涼み」という噺、普通の高座ではやらないようなチョイと色っぽい情景とセリフでこちとら得した気分。
橋の上からお大尽が芸者をはべらせて舟遊びをしているのを見て
あの野郎、可哀そうに片腕だバカ、片腕はなぁ隣の芸者のヤツクチから中に
えっつ!勘弁出来ねえ、そんなことをしていいのか!お~い、気をつけろ!懐の財布を狙ってるぞなんにも分かってない。
あれが狙ってるのはなあ、ふた~つ、腫れてるもの、「おや、これはいったいなんでしょう?お寺の釘隠し?」なんちゃって
え~っ!そんなことやっていいの~!あの野郎、頭に毛がねえくせに毛がなくたって銭があるから、おまえは毛があるけど銭がねえ麻生さんがどうなろうと知ったことか、先日川下りをしたばかりの俺も銭はないけど毛は薄い。
続いて「あくび指南」。
これも四季折々のあくびの中で「夏のあくび」を習おうっていう噺。
やっぱり大川の舟遊びが出てくる。
小三治の「あくび指南」は新築の指南所の空気を感じさせたりお師匠さんのあくびの模範演技が粋だが喜多八は八五郎のがらっぱちに焦点をあてて爆笑をよぶ。
いったん可笑しくなりだすともう止まらない。
舟に揺られている振りとかあくびをしようにもどうにもできない表情など高座を見るから初めて大笑いできる。
銀座まで来たかいがあるってものだ。
仲入り後、太田その、松本優子が三味線で夏の曲を歌う。
先日来、小菊や小円歌で聴いている「両国風景」もやってくれた。
これまた大川舟遊びが登場する。
再び喜多八が上がって「千両みかん」。
去年も聴いたので記事にしてあるがなんとなくあれとはだいぶ違う演出のようだ。
どこがどうといえないのが残念だが。
この噺は演ずる方からすると難しいだろうと思う。
みかんを食べたくて死にそうになる若旦那、夏の真っ盛りであるのを失念してみかんを手に入れられると安請け合いして逆さ磔の恐怖におびえながら江戸市中をみかんを探して歩く番頭、いつの日かそういう客が現れることを期して大量のみかんを蔵に囲っていた問屋、それが一粒千両の値をつけても安いものだと買う旦那、、、どこをとっても”あり得ない”噺を笑わせながらも一種の緊迫感をもって、ということはバカバカしい噺なのに聴き手をその世界に引き込む力が必要だ。
引きこんでおいて終わってみれば“あ~あ、うまいこと騙されたなあ、面白かった”という法螺噺の醍醐味も感じさせて欲しい。
モノの価値観がどうたらこうたらとあまり理屈で考えない方がいいような気がする。
喜多八の千両みかん、やはり番頭が逆さ磔の恐怖におののくところが面白かった。
でも今日は「夕涼み」と「あくび指南」の掛け合いが最高だった。
↓ どうもおかしいと思っていました。
お寿司 あと二皿でしたら充分過ぎるくらいですね。
味噌汁もつくのですから。