観てお得、聴いてお得 権太楼噺爆笑十夜(上野鈴本)

子どもたちにはちょっと可哀そうだけど休日の雨は嫌いじゃない。
傘取りにもどって出かける薬の日
小三治が句会で作った由。
5月5日は「薬の日」でもあるということを69歳にして知ったと云う(俺も知らなかった)。
この句、小沢昭一や永六輔などの仲間からは全く評価されなかったがゲストの俳人・中原道夫からは「天」に抜かれたと嬉しそうだ。

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(小雨けぶる不忍池、カワウが羽を広げているのを撮りたかったんだけど)

薬の日の由来や高速道路料金1000円の愚挙(まったく道灌、じゃない同感)をあげつらうマクラについで「二人旅」。
蕪村の句から
この舌で嘘をつくと思えば憎らしい噛んでやりたいときがある
寄席ならではの都々逸などなんやらかんやら歌尽くしで道中を盛り上げようってのに腹が減ったの一念で一向に乗ってこない相棒。
いるよなあ、こういう興ざめな奴、老若男女を問わず。
やっとついたお茶屋のとぼけた婆さんの造型が小三治風で楽しい。

ふっと気がついて取れっこないと思いながらも行ってみたら取れた当日券、上野鈴本の「権太楼噺爆笑十夜」だ。

権太楼、行きつけの床屋(はっつあんが長髪ではまずいから江戸の噺家は短い頭にするんだと)では畳やと思われているというマクラで笑わせて「幽霊の辻」。

今日中に堀越村に手紙を届けなきゃならないのに日が落ちそう。
茶店で気持の悪い婆さんに道案内を乞うと、「水子池」「獄門地蔵」「父(てて)追い橋」「首くくりの松」「ぽっくり寺」、教えなくてもいいのに薄気味悪い場所の由来を語る。
枝雀のやり方とは違ってひたすら爆笑爆笑、婆さんのしゃべりと配達夫の反応、とくに権太楼の百面相が面白いのだが、そも怪談というものは爆笑の要素を含んでいるんだなあ、と思った。
荒唐無稽?人間の性(サガ)・業?煮詰めたら落語になり怪談になるもの。





枝雀のを上げたけれども権太楼のもぜひ聴いてほしい(どうやってか?知らん、俺も訊きたい)。
ずいぶん違う。
どっちもいいけれど。
でもこうしてみると枝雀の落語界に与えた影響って大きいなあ。

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(骨董市、前の人物はノー関係だが捨てるには惜しい点景)

いつもと違って若いカップルなども多く若やいだ客層、権太楼人気?
小菊の代演で出た紫文の「長谷川平蔵」、「綿屋の“コットン”」、「隠れキリシタンの”おめえはフ・ミ・エ”」「中国の要人の骨が折れたよ”コッキント”」などが大受け、なある!彼の芸は若いもんに向いてるんだ。
切符買って時間がありあまるのであちこちさまよっているときにアメ横の雑踏ですれ違った紫文が、ジャンパーを着てガラガラを牽いて、ほんとに“そこらのあんちゃん”だったのを思い出した。

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(蓮玉庵、何年振りだろう、天ぷらそばなんて。学生時代には最高の御馳走だった。
家庭教師の給料が出たときに食べた。あとは金がなくなって焼けのヤンパチのときに。
久しぶりだけどダメなそばになり下がっていた。
注文するや否や、という感じで出てきたら蕎麦は茹で足りないし量もウソみたいに少ないし、代金を払うときに見たら厨房で職人たちが雑談に興じている。
3時半という中途半端な時間、いっそ休みにしたらいいのに。
田舎から出てきた俺みたいのがちゃんとした蕎麦を食べたくなるのは時と所を選ばずだから少しは営業になるってのも分からんではないが。やるならやるでちゃんとやっていただきたいものです、えへん)

場内の若い人が楽しそうにしてこちらも楽しくて結構毛だらけでありましたが一つ気になったのは「若い男の子がそれほどでもないところでキャアキャア笑う」こと。
箸が転んでも笑うって、、?
浅草演芸ホールもGW特集で小三治など総動員、行ってみたいのだが鈴本は出演者数を普段より少なくして豪華版、もう一度となったらやはりこっちがいい。




開口一番に正楽!
聞きなれたジョーク、何度か見たテーマでも面白い。
パッと現れたミッキーマウスに「あらあ!」と驚くおばさんたちの反応も楽しい。
満員の席の真ん中あたりで、はいっ!と手をあげてお題を出すのはKYだとは思うけれど。どやって高座まで取りにいくねんテ?

燕路「初天神」
高座にかかる度合いが多い噺、いつ聴いても楽しい。

甚語楼「黄金の大黒」
前半分しかやらないことが多く今日もそうだった。
長屋の若い衆はいいなあ。
格差社会なんてとんでいけ~!

菊之丞「棒だら」
急ぎ過ぎ、もっとゆっくり芋侍のおかしみを。
それには噺家が芋侍になることだって!
彼を軽蔑している江戸っ子の視線で描いちゃつまらない。
芋が一生懸命遊べば遊ぶほど芋であるからおかしいし、そのおかしさに哀しさが味付けされて深みが出るのに。

漫才、のいる・こいる
久しぶりに「よかったよかった」を観て懐かしかった。
でも、そろそろ、、?けなし合いが芸でなくてリアルに白けてしまった。

歌武蔵、新作。

太神楽・仙三郎社中
アァ、よかった!無事ノーミス。

正朝「家見舞い」
”あと三つドロップ”、膝前。膝。トリ。最後の三人を残して帰ってしまうことを言うんだと。
アトミックドロップ、ご存じかな。
そういえば権太楼が畳やのマクラで畳やの仕草をネタにジョークを言ったときに前の席の若者が「わかんね」、首振ってた。
正朝は膝前に起用されることが多いと言ってたが分かるような気がする。
軽くて楽しくて巧くて、、寄席の空気をうまく盛り上げて邪魔なこともせずにトリの出番を作るのは誰にでもできるこっちゃない。
Commented by 散歩好き at 2009-05-06 21:54 x
落語「崇徳院」で冒頭、上野の清水さんにお参りをして五条天神の前の茶屋の毛氈に座って茶を飲んでいると水も滴る良い女と会った。という精養軒の脇の不忍池に下る坂道に上野の五条天神があります。此処も医薬を祭り10月には製薬会社の旗が坂一杯に翻ります。薬の日も製薬メーカーが作った記念日のようです。
Commented by せん at 2009-05-06 22:16 x
最近に気になるのが、必要以上に声のでかい若者が目立つこと!
喫茶店でも、電車(実は、お恥ずかしいことに徳島には汽車しか走ってないのです・・・。)でも、公共の施設であたりかまわず大声で話す若者!
別にキミのことなんて知りたくもないし、聞きたくも無いのに、友達と大声でたわいのない話を延々とする。
これはどうしたことなのか?
若者ステーション主宰の友達に聞くと、携帯電話の弊害らしい。
マナーやモラルはどこへ?
あんたが昨日何してたかなんて、聞きたくないよ!と、叫びたくなります。
Commented by HOOP at 2009-05-06 23:12
カワウの羽は水を弾かないのだそうで、雨の中を飛んでいると、
水を吸った羽が重くて落ちてしまうこともあるのだとか。
雨もよいに羽を広げることはなさそうです。
Commented by takoome at 2009-05-06 23:42
ついつい聞き嵌ってしまいました。 ありがとう。
Commented by 夢八 at 2009-05-07 05:06 x
天ぷら、しかも海老2本なんて、食べられるようになったのは
社会人で、先輩のご馳走になるときだけ・・・。
思い出しますね、けっこう、いやな言葉だけど
貧乏してました。
本人は、貧乏してたなんて、思ってなかったですけど、
それなりに生きてたんでしょうね。

厨房の職人たちや、花番たちの無駄話、
あれ、いちばんいやですね、客をなんだと、思ってるんだろう。
ま、その程度の店だと思うようにしますが。
Commented by maru33340 at 2009-05-07 07:21
やはり鈴本行かれましたね。権太楼良いですね。出来ればもう一夜行きたいほどです。確かに若い男衆がギャグが入るか入らないかで高い大きな声で笑うのは、ちょっと気になりましたが…レッドカーペットなどの短時間芸の影響でしょうか?
Commented by sweetmitsuki at 2009-05-07 07:37
子供の頃参加した林間学校で肝試しをやったのですが、地元の先生が始まる前に怪談噺をしてくれたのはいいのですけど全然怖くなくて、周りの生徒たちが本気で怖がってるのが不思議におかしくて吹き出しそうになってしまったのを思い出しました。
その時は「皆が怯える様を見て一人笑う自分」に、背徳感のようなものを感じたのですが、落語のネタにもあったのですね。
この噺は初めて知りました、面白かったです。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 07:42
散歩好きさん、鹿の角を落とす日だとか、薬草取りに山に入る日だとか菖蒲がとか、小三治がいろいろ話してくれました。
散歩好きさんなら何とおっしゃるかなと思いながら聴いていましたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 07:44
せん さん、もう一つ、耳の中でイヤホン、これでつい大きい声で話す癖がついたのかも。
あれはすさまじいですね。半径3メートルくらいにシャカシャカ!
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 07:46
HOOPさん、写真の左の鳥が羽を広げていたのですよ。
チャンス!カメラを構えると畳んでしまった。
私の携帯カメラは起動してピントをあわせたりするのに時間がかかるのです。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 07:48
takoomeさん、お忙しいのに^^。
高座で見ると顔が面白いだろうと思います。
もう亡くなってしまったけれど。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 07:49
夢八さん、好きな店だったのですが、、。
想像するに経営者がちゃんと臨店していないのでは?連休に自分も休んでいる?
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 07:53
maru33340さん、二通りあるようですね。
俺は落語に詳しいぞ、ってのとほんとに笑いに対する飢餓というか他愛もない人の。
普段の生活がユーモアに乏しいのだろうと同情もします。
笑うところで苦虫噛みつぶしたり、ユーモアが通じない人よりはましです。
私ももう一度行ってみようと思っています。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 07:56
sweetmitsukiさん、私は臆病ですから今でもお化け屋敷などまっぴらごめんです。
ただ妻が亡くなったときは幽霊に会いたかったけれど。他人の幽霊でも怖いと思わなかった。
出てこなかったなあ^^。
あとで聞いたら権太楼の当たり芸なんだそうです。
道理で格別におかしかった。
Commented by 芙蓉 at 2009-05-07 09:49 x
この時間、昨夜からの雨は上りましたが、
休日の雨降りもいいですね。
覚悟して、心底休めますもの♪。

幽霊とききまして、思わず、
山本周五郎作品、「ゆうれい貸屋」を思い浮かべました。
あんな幽霊なら、ちょっと出てきてほしいかも!
江戸の庶民のほのぼのとした人情味溢れる長屋でのお話、
お茶目で粋な幽霊なら私も大歓迎!
Commented by 高麗山 at 2009-05-07 11:50 x
「佐平次劇場」、枝雀の“幽霊の辻”

しばし、ありがとう御座いました。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 13:01
芙蓉さん、お茶目で粋な幽霊!
なんかアメリカ映画のお化けみたいですね。
周五郎の作品はかなり読んでいるのにそれは覚えがないです。
この噺の幽霊は怖い幽霊です。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-07 13:02
高麗山 さん、枝雀は浮かばれているから幽霊にはならないと思いますが、一度聴きたかったです。
Commented by 旭のキューです。 at 2009-05-08 07:11 x
素朴な天婦羅蕎麦、やるならやるでちゃんとやっていただきたいものです。同感!
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-08 07:34
旭のキューです。さん、恵まれすぎた立地と老舗の名前に安住しているのだと思ってしまいます。
Commented by naomu-cyo at 2009-05-11 22:34
 「幽霊の辻」聴きたかったです〜。でも前売りが即完売しちゃってたんで当日も無理かなあと思って、わたしは4日と10日に行きました。両日とも小三治師匠が出ない日だったんですが、4日は市馬師匠「片棒」(ええ声で歌ってました)、10日は喬太郎師匠「小言幸兵衛」でした。10日は代演がほかにもあってなんと!さん喬師匠「真田小僧」、白酒師匠「金明竹」。持ち時間ものんびりめでじっくり聴けてとてもいい公演でしたねー。
Commented by saheizi-inokori at 2009-05-12 07:20
naomu-cyoさん、当日券は早い時間に行かなければいけないけれど案外とれるのですね。
小三治がっ代演になるのはさびしいけれど他の人がいい高座を聴かせてくれるから結構充実します。さん喬「真田小僧」は凧揚げまでやりましたか、いいですね。
白酒もいまや上り調子、金明竹爆笑でしたでしょう。
私が行った二度に菊之丞「棒だら」歌武蔵「落選確実」を同じのをやりました。これはまずかったです。
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by saheizi-inokori | 2009-05-06 21:31 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(22)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori